フランチャイズのエリア制とは?仕組みやメリット・注意点などを解説


代理店ビジネスには、一次代理店や二次代理店などの本部企業との関係性の近さで構築される仕組みがあります。フランチャイズビジネスの場合は、店舗展開を拡大するうえでどのような仕組みが採用されるのでしょうか。

フランチャイズには、本部企業を中心にして地区分けによるエリア制があります。エリア制を導入するフランチャイズは、エリアフランチャイザーとも呼ばれます。今回の記事では、フランチャイズビジネスのエリア制について、どのような仕組みで成り立っているのかメリットや注意点などをふまえて解説しましょう。フランチャイズビジネスで多店舗展開を目指す企業や、本部企業の信頼を強固にして他の加盟店と差別化を図りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

フランチャイズのエリア制とは


フランチャイズのエリア制は、代理店制度の一次代理店の役割とよく似た仕組みです。フランチャイズ本部とは異なる別の事業者に、本部と同じ役割や権限を持たせる点が類似しています。エリア制は、その権限の範囲をエリアで分類して、そのエリア内の統括本部として機能する制度です。

エリア制を導入することで、フランチャイズ本部企業は、別の事業者に対してエリア権を付与する形になります。

エリアフランチャイズで付与される6つの権利

フランチャイズビジネスでエリアフランチャイズ制度を導入した場合、本部企業はエリアフランチャイズに以下の権利を付与します。

  • 担当エリア内の加盟店募集をする権利
  • 担当エリア内で加盟店を開発する権利
  • 店舗運営ノウハウを扱う権利
  • 担当エリア内の加盟店に対して商標権の使用を代理許諾する権利
  • 担当エリア内の加盟店に対してノウハウの使用を代理許諾する権利
  • 担当エリア内の加盟店からロイヤリティなどを徴収する権利

この制度は、加盟店が複数に増えた場合、本部企業だけでは加盟店管理業務に対応しきれなくなるための対処と考えられます。とくにエリア内の加盟店増加が見込まれる地域では、有効な方法です。

エリア制を導入している業種


エリア制を導入しているフランチャイズは、多店舗展開している特徴を持っています。代表的な業種では、コンビニエンスストアなどの小売業や飲食業などが考えられます。なかでもコンビニエンスストアや飲食関連は、全国的にも多店舗展開が盛んな業種です。

たとえば、加盟店のなかで成功している事業者がいれば、その事業者をエリアのリーダー格(エリアフランチャイザー)に抜てきしてエリア制を構築します。エリアフランチャイザーは、自店舗による実績を手本としながらエリア内で加盟店加入促進の役割を果たす仕組みです。コンビニエンスストアの本部企業にとっては、そのエリアの対応を委ねられるため、全国展開を目指すビジネスには欠かせない手法と考えられます。

エリア制を構成する2つの仕組み


フランチャイズのエリア制には、2つの仕組みがあります。

サブ・フランチャイズ

先ほど、コンビニエンスストアの例で触れたエリア内で加盟店を増やす仕組みは、サブ・フランチャイズにあたります。サブ・フランチャイズの仕組みは、次の契約系統で成り立っています。

フランチャイズの本部企業→マスターフランチャイズ契約→エリアフランチャイズ加盟店→サブフランチャイズ契約→加盟店

エリアフランチャイズは、本部企業とマスターフランチャイズ契約を交わすことで、エリア内の加盟店募集や新規出店に携わる権利を得ます。加盟店は、エリアフランチャイズ(エリア本部)とは別の事業者として独立しているため、店舗展開のマニュアルが整備されているフランチャイズビジネスであれば、多店舗展開を迅速に進められるでしょう。

エリア・デベロップメント

エリア・デベロップメントは、サブ・フランチャイズの加盟店募集・開発権利とは異なり、エリアフランチャイズがエリア内で直営店を複数持つことのできる仕組みです。エリア・デベロップメントの採用は、そのエリアにおいて優秀な人材を多数確保している場合に有効にはたらくでしょう。独立意識の高い人材を自店舗に抱えているエリアフランチャイズオーナーは、エリア本部の立場になって優秀な人材を直営店オーナーに置くことができます。エリア・デベロップメントの仕組みは、次のとおりです。

フランチャイズの本部企業→フランチャイズ契約→エリアフランチャイズ本部→直営店

フランチャイズ契約を交わしているのは、エリア本部のみで成り立っています。エリア本部直轄の直営店をエリア内に増やしていく仕組みとなるため、方針やマニュアルを浸透させやすい仕組みが特徴です。ただし、直営店の数が増えればエリア本部の管理負担も増える点が課題とも

特定のエリアでエリアフランチャイズを導入するメリット(本部側)

特定のエリアにおいてエリアフランチャイズを導入することは、そのエリア内を任せられる支部を作る効果に匹敵します。エリアフランチャイズの役割は、本部企業の持つ権限を特定のエリア内で発揮できるため、本部企業の目指すフランチャイズの拡大を実現しやすくなるでしょう。その結果、収益の増加につながることも期待できます。

エリア制を導入している本部の加盟店になるメリット(エリア本部加盟店側)

エリア制を導入している本部企業のエリアフランチャイズになることは、二重の収益を得られるメリットが考えられます。傘下加盟店などから徴収するロイヤリティの一部をエリア統括の報酬として得られる点がひとつです。もうひとつは、自店舗の売上から得られる収益もあるので単純に複数の収益獲得を実現できます。

エリアフランチャイザーのデメリットから考えられる注意事項


エリアフランチャイザーになることは、メリットばかりではありません。エリア本部として傘下の加盟店からロイヤリティの一部を収益にできる分、通常の開業よりも高額な加盟金を支払うことが考えられます。そのため、エリアフランチャイザーを目指す場合は加盟店募集や開発への手腕を持っていることが求められるでしょう。本部の意向をくみ取りつつ、的確な判断で加盟店を導いていく能力が必要とされます。

エリア制導入で本部企業が注意すべきこと

フランチャイズの本部企業にとっては、エリア制導入が大きな転機にもなります。エリア制導入の鍵を握るのは、本部と傘下の加盟店の間に立つエリアフランチャイズです。もし、エリアフランチャイズの事業者が本部の意向をくみ取っていない運営をしていた場合、傘下の加盟店の運営に問題が生じ、契約などあらゆる面でトラブルを起越すことが考えられます。最悪の場合は、エリア傘下の加盟店を一気に失うこともあるでしょう。そのような理由からも、エリア制を導入する場合は、エリアフランチャイズとなる加盟店事業者の適正の見極めが重要です。また、エリアフランチャイズ事業者に対して全面的な信頼を寄せるのではなく、定期的に運営チェックを交わす機会も必要と考えられます。

まとめ

今回は、フランチャイズのエリア制を理解するためのエリアフランチャイズの仕組みについて解説してきました。エリアフランチャイズは、本部企業にとって管理業務の委任と多店舗展開の促進につながります。その取り組みが企業ブランドの向上にもつながるでしょう。

ただし、エリア制を導入した際はエリアフランチャイズ本部に任せすぎも問題になります。その問題を回避する方法は、加盟店と交わす契約と同じでエリア制の導入時だけではなく、定期的な組織内の認識を確認する機会を設ける必要があります。組織が巨大になれば、任せすぎはトラブル発生の要因にもつながる点に注意しましょう。