代理店契約と販売店契約の違いとは?契約のメリットデメリットから検証


「知名度のあるメーカーの商品を販売したい」

このような目的を持って事業を始めようとしている人もいることでしょう。すでにある商材を企業から提供されて、販売するビジネスモデルは存在します。それは、企業に代わって企業の提供する商品やサービスを販売する仕組みのことです。

企業に代わって商材を販売する仕組みとは、販売店のことでしょうか。それとも代理店のことをあらわしますか。今回は、販売店契約と代理店契約の違いについて解説します。それぞれの契約の特徴や異なる点、契約にあたり注意すべきことなどを紹介するので、ビジネスモデル選びの参考にしてみてください。

販売店契約


現代では、製品に対して取り扱いの異なる契約形態が増えています。販売店契約は、メーカーが開発した製品を卸値で買い取り、消費者に販売する仕組みです。

たとえば、小売業の店舗があるとして、その店舗の陳列棚にメーカーの商品が並んでいたとします。その商品はメーカーより卸値で仕入れ、小売店の販売手数料を上乗せした金額で販売するイメージです。つまり、小売店が再販権を持つビジネスモデルのことを販売店と呼んでいます。商品を提供するメーカーと販売店が交わす契約のことが販売店契約です。

メリット

販売店契約には、販売店側の裁量で決められるメリットがあります。それは、メーカーから仕入れた金額に上乗せする販売価格をある程度自社都合で決められることです。販売店は、メーカーから商材を仕入れなければなりません。仕入れた商材に対して、販売価格を自由に設定できる特権を持っています。これは、事前に仕入れが必要な契約のメリットではないでしょうか。

メーカーから買い取った製品は、販売店契約の場合、売れ残りをメーカーが引き取ってくれません。そのため、仕入れ後は裁量判断で価格設定できなければ在庫を抱えてしまいます。そのため、売れ残らないように値下げをすることも考えられます。

メーカー側は、自社製品を販売店に卸値で提供するため売上の確保が可能です。製品を販売するためのコストが掛からず、製品開発に集中できるでしょう。販売店契約は、メーカーと販売店双方にメリットがあります。

デメリット

販売店契約のデメリットは、販売店が在庫を抱えることです。販売前にメーカーから製品を仕入れるため、在庫として売れ残る場合もあります。在庫として残った製品は、需要がなければ仕入れ値以下の金額まで価格を下げて販売することもあるでしょう。そのようなケースが増えれば、赤字経営となってビジネスが成り立たなくなります。

メーカー側は、販売店の設定する価格設定を拘束できない決まりです。もし、メーカーが販売店に対して「この商品を1,000円で販売してください」と指示を出したり、「1,000円以外で価格設定したら販売店契約違反です」と指摘したりすれば独占禁止法に触れます。

販売店は、メーカーから商材を仕入れて在庫を抱えるリスクがあります。それだけに、仕入れた商材を自由な価格で販売できる再販権があります。この販売店の価格管理についてメーカーが介入することは独占禁止法に触れることが考えられるため、価格に対しては介入できないと理解しておきましょう・

代理店契約


販売店契約と違い、顧客との直接的な売買契約に携わらない立場が代理店契約です。代理店契約は、商材を開発するメーカーの代理として顧客への販売活動を行います。販売活動において、顧客が購入意思を決めた場合、メーカーへ送客します。代理店は、購入意思の決まった顧客をメーカーへ送客し、顧客はメーカーと売買契約を交わします。そのため、代理店は商材の仕入れがなく、在庫を抱えることのないビジネスモデルです。

メリット

代理店契約は、メーカーの商材を仕入れる必要のない点がメリットになります。仕入れがいらなければ、仕入れコストが掛かりません。そのため、ビジネスを始めるにあたって仕入れに投入する資金の用意が不要です。

また、代理店は購入意思を決めた顧客の送客が業務となるため、購入後の顧客対応の必要がありません。代理店は、売ることだけに集中できる立場です。営業活動に集中できる点がメリットになります。

デメリット

代理店は、顧客との売買契約を交わしません。自由な価格設定で訴求できないため、メーカー提示の価格で案内する必要があります。代理店は、顧客との売買契約に関わらないため、販売成立時の手数料を報酬とします。販売価格を決められない業務委託の立場と理解しておきましょう。

契約上注意すべきこと


メーカー本部から商材の販売を委ねられて、代理販売する形式が代理店です。では、代理店と販売店は、明確に区別されるのでしょうか。先述した販売店の場合は、商材の買い取り(在庫リスク)が必要なため、自由に価格設定できる再販権を持っています。自由な価格設定は、独占禁止法で守られる部分です。

ただし、メーカー企業の中には、その辺の取り決めがあいまいな契約もあるかもしれません。代理店の立場で商材の在庫を抱えてメーカーから販売価格を強引に提示されるパターンです。もし、契約においてこのような内容で同意してしまうと、後のトラブルへとつながる場合もあります。

メーカー企業は、契約の段階で販売店契約となるのか、または代理店として契約するのかを明確しておく必要があります。さらに、契約する事業者はその点をあいまいにしたまま契約しないことが大事です。

販売店が注意すべきこと

販売店がメーカー企業と契約する際に注意すべきことは、次のとおりです。

  • 販売権の内容が明確に掲載されているか
  • 販売店に対して販売価格を拘束するような記載がないか
  • メーカーの商標など知的財産の取り扱いの取り決めがされているか
  • 販売店は競合の商材を取りあつかうことが可能か

 
上記に紹介した契約上の注意事項は、契約内容が独占禁止法に抵触していないかの確認となります。また、販売店が独占してその商材を取りあつかえる場合は、独占権と引き換えに競合の類似商材の取り扱い不可となるケースもあるでしょう。その場合は、競合品取り扱い禁止の期間や対象範囲などが契約書に記載されているかを確認すべきです。

代理店が注意すべきこと

代理店がメーカー企業と代理店契約を交わす場合は、次のことに注意しましょう。

ディストリビュータ方式:商品の仕入れが必要な販売代理店(自由に販売価格を設定できる)
エージェント方式:顧客と売買契約を交わさない代理店(報酬は販売手数料)

 
代理店は、「メーカー企業がどの形態で代理店契約を交わすのか」という点に注意する必要があります。販売代理店という名称は、販売店と代理店の区別をあいまいにさせることが考えられます。また、販売代理店という立場が販売店と代理店の都合の良い部分を契約内容に盛り込んでしまうかもしれません。

代理店事業者は、上記2つの契約形式を理解して、どちらの形式の契約となっているかを把握する必要があります。

まとめ

本記事で紹介してきた販売店と代理店の契約について違う部分が理解できたでしょうか。販売店契約は、売値を自由に設定できるメリットを持ちますが、仕入れなどが必要です。その点、代理店契約の場合は商材の仕入れを必要としない紹介までの対応で成果となります。

代理店契約や販売店契約、販売代理店契約など、似たような呼び名で混乱するかもしれません。中には、契約形態と契約内容があいまいなケースも考えられます。本章で紹介した販売店の定義や代理店の定義などを参考にして、「交わす契約がその契約に該当するのか」を確認しましょう。