フランチャイズの開業は個人事業主と法人のどちらが最適?違いを解説

「独立しようと考えているけれど、個人でフランチャイズを始めるべきか法人として始めるべきか」

フランチャイズで開業する際は、個人事業主で開業すべきか、または法人で開業すべきかどちらが良いでしょうか。フランチャイズの加盟店の対象は、個人事業主だけではありません。フランチャイズの業種によっては、法人の方が適している場合もあります。

この記事では、フランチャイズの開業について、個人事業主と法人事業どちらがいいかを考察します。個人事業主のフランチャイズと法人のフランチャイズの違いについて解説しましょう。

フランチャイズビジネスでは、本部企業と契約を交わすことで加盟店の事業が始まります。加盟店として開業する場合は、加盟店の立場によって開業時の手続きなどが異なります。

個人事業主のフランチャイズ開業


個人事業主としてフランチャイズで開業する場合は、以下の手続きや準備面で違いがあります。

開業時の申請手続き

個人事業主が事業を始める場合は、税務署でも手続きだけで申請が完了します。税務署に提出する書類は、開業届です。開業届には、事業者の情報や事業内容を書き込むだけの1枚の用紙に記入するだけで完了します。また、申請に関しては費用が発生しません。そのため、手軽に申請できる点が特徴です。

開業後は、48万円以上の年間所得があれば確定申告の必要があります。給与所得者や事業所得者など所得を得ている人は、年間2400万円以下であれば基礎控除を受けられます。基礎控除の額は、年間48万円です。この仕組みから年間48万円以下の事業所得であれば確定申告の必要がありません。

また、確定申告では、開業届とあわせて青色申告承認申請書も提出することをおすすめします。その理由は、個人事業主の開業では青色申告特別控除が受けられるからです。青色申告控除は、最大で65万円または55万円、もしくは10万円の控除が受けられます。

青色申告事業者になった場合は、損益計算書や貸借対照表、月々の売上台帳などの提出が必要です。

税金関係

個人事業主の納めるべき税金は、以下の項目があげられます。

  • 所得税
  • 住民税
  • 消費税
  • 個人事業税

コスト面

個人事業主の場合は、経営者の給与を事業経費として計上できません。そのため、収益が増えることで税金も増えていく仕組みとなります。青色申告控除やその他個人の節税以上に収益が発生する場合は、法人化も視野に入れることが必要です。

その際、フランチャイズ契約相手の本部企業が契約対象条件を法人としていない場合は契約の解除にもつながります。個人事業主から法人になる場合は、契約書または本部企業へ確認してみましょう。

社会的な信用度

社会的な信用度では、個人事業主よりも法人の方が高くなります。法人は、法人化する際にさまざまな申請をします。さらに法人用の決算や納税などもあるため、責任の大きさに違いが出てくるでしょう。

社会的な信用は、運転資金や設備投資を目的とした融資や補助金の申請の際に大きく影響します。金融機関や公的機関、取引先からの見られ方も違うことを理解しておきましょう。また、フランチャイズの業種によっては、加盟店の募集を法人限定で行っている本部企業もあります。公的機関が絡んでいる事業などは、対法人のフランチャイズ形式も珍しくありません。フランチャイズ加盟店の募集条件を事前に確認して判断しましょう。

法人事業のフランチャイズ開業


法人としてフランチャイズ事業の加盟店になる場合は、個人事業主以上に開業時の手間やコストが掛かります。

開業時の申請手続き

法人として開業する際は、以下の手続きが必要です。

  • 会社の基本事項の設定:事業目的・商号(社名)・所在地・資本金・役員など
  • 定款(会社の基本事項を文書化したもの)をつくる
  • 公証役場において定款認証の受理
  • 代表個人口座へ設定した資本金の払い込み
  • 会社設立登記の実行
  • 税務署への届け出

法人は、個人事業主と違って税務署への届け出の前に必ず行う手続きがあります。それらを済ませた上で税務署へ法人設立の届け出を行います。法人設立の届け出に必要な手続きは以下のとおりです。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告承認申請書
  • 給与支払事務所等開設届出書
  • 源泉所得税の納金特例の承認に関する申請書

税務署へ届け出る際は、個人事業主から法人化する場合、個人事業の廃業届も必要となります。さらに、経営者自身が会社から役員報酬をもらう仕組みとして、社会保険の加入を手続きする必要があります。社会保険で加入する保険は以下の3つです。

  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • これら社会保険の加入申請は、所轄の年金事務所で行います。また、雇用が発生する場合は、労働基準監督署やハローワークでの労働保険の加入も必要です。労働保険の加入には、以下の手続きが求められます。

    労働基準監督署:保険関係成立届
    労働基準監督署:概算保険料申告書
    ハローワーク:雇用保険適用事業所設置届
    ハローワーク:雇用保険被保険者資格取得届

     
    これら手続きの準備が整ったら、会社の運営を開始できます。その際、会社の銀行口座は個人の口座ではなくなるため、法人化後は個人的な利用ができなくなります。個人的な支払いなどは、別の口座で行うように注意しましょう。

    税金関係

    法人の場合は、以下の税金を納める必要があります。

    • 消費税
    • 法人税
    • 法人住民税
    • 地方法人特別税

    これらは、法人が納める基本的な税項目です。フランチャイズ本部の業種によっては、項目が増えるかもしれません。事前に、フランチャイズ本部との確認が必要です。

    コスト面

    法人の場合は、コスト面において法人としての節税効果が見込めます。もっとも大きな部分は、法人代表者の役員報酬を経費として計上できる点です。

    社会的な信用度

    社会的な信用では、個人事業主よりも法人の方が高くなります。とくに金融機関や公的機関など融資や補助金に関する部分で違いが出てくることが法人化する理由とも考えられるでしょう。

    フランチャイズで独自のビジネススタイルを実行すること


    フランチャイズの加盟店で法人化する場合や、個人事業主として継続していく際に、本部企業との契約で確認しておくべきことがあります。それは、フランチャイズで独自のビジネススタイルを実行することが可能かどうかです。

    フランチャイズは、あくまでも本部企業主導のもとで成り立つビジネスモデル。そこに加盟店独自のアイデアや意向を含めることは難しくなります。法人化や個人事業主として飛躍することを考えている場合は、自由な経営で進められないことを念頭におきましょう。あくまでも本部企業のブランドを利用してビジネス展開している立場であるため、自由な経営を目指すのであれば、個人経営を選択する必要があります。

    まとめ

    今回は、フランチャイズビジネスへの参入を個人事業主で行うべきか、法人事業として行うべきかについて解説してきました。どちらにもメリット部分や負担となる部分もあります。その業界で根強く事業展開を目指すのであれば、法人として取り組むこともひとつの方法です。

    また、経験の上で継続して取り組むか迷っている場合は、個人事業主から始めてみましょう。
    個人事業主は、開業段階で手続きが簡単な面が大きなメリットです。個人事業主で取り組んでみて継続して事業拡大を目指せるのであれば、法人化も視野に計画を立てられます。加盟店を目指す人の状況にあわせて検討してみましょう。